2018年12月08日

合格実績について

松明塾は基本的に大学受験の「合格実績」を公表していません。

理由はいくつかあるのですが、それはまた後で書きます。

私としてはちゃんとした理由に基づいて合格実績を公表していないのですが、そのせいで嫌な思いをする生徒がいることを知ったので、ちょっとだけ考えを曲げて公表します。

ただ、考えが変わったらこの記事は削除します。

松明塾は設立して今年で5年目になるので、これまで4回の受験を体験しました。

この4回の受験で実際に生徒が合格し、進学した大学(一部抜粋)が下記です。

ちなみに、具体的な人数は挙げません。わかる人はわかると思いますが、面倒なことになることが多いので。

よって、大学によっては1人しか進学していない大学もありますし、複数の生徒が進学しているところもあります。


こういう書き方をすると

「具体的な人数を隠すってことは何か誤魔化しがあるんじゃないの?」

とか、変な勘ぐりが入るのが嫌なので1つだけわかりやすい数字を挙げておきます。

うちの過去4年間の進学先のうち、国公立大学が占める割合は18%です。全く同じデータの取り方で松高全体の実績を出すと7.5%になります。

簡単に言えば、普通の松高生だったら10人に1人くらいが国公立に進学する一方、松明塾に通う松高生は5人に1人くらいが国公立に進学するということです。それくらいの指導をした結果の進学先が次の内容になります。

【国公立大学】
筑波大学 理工学群
埼玉大学 工学部
埼玉県立大学 保健医療福祉学部
電気通信大学 情報理工学域
信州大学 工学部
群馬大学 理工学部
宮崎大学 農学部
高崎経済大学 観光学部
佐賀大学 教育学部
秋田大学 理工学部

【早慶・G-MARCH】
早稲田大学 基幹理工学部
明治大学 文学部
明治大学 理工学部
明治大学 農学部
青山学院大学 経済学部
中央大学 理工学部
東京理科大学 理工学部
学習院大学 経済学部
芝浦工業大学 工学部

【中堅私大】
明治薬科大学 薬学部
東京薬科大学 薬学部
工学院大学 工学部
武蔵大学 人文学部
武蔵大学 経済学部
國學院大學 法学部
専修大学 経営学部
東京電機大学 理工学部
東京都市大学 工学部
東京農業大学 農学部
東洋大学 理工学部
東洋大学 ライフデザイン学部
東洋大学 経済学部
東洋大 文学部
日本大学 商学部
日本大学 危機管理学部
明星大 教育学部

と、まぁこんな感じの実績が出ています。

ここには日東駒専レベル以上の実績を上げましたが、もちろんそれより下の大学に行く人もいます。割合としては18%くらいです。これまた松高の数値と比較すると、松高では31.7%の生徒が日東駒専よりも下の大学の進学しています。

普通の松高生だったら3人に1人くらいが日東駒専よりも下の大学に進学する一方、松明塾に通う松高生は5人に1人くらいがそのレベルの大学に進学するということです。まぁ良好な実績と言えるでしょう。

ちなみに、こうやって「高校全体との実績」と比較すると、まるで高校と争っているような印象になりますが、そういう意図は全くありません。

高校はライバルではなく、同じ生徒を預かる同志のようなものだと私は(勝手に)思っています。

そもそもの話で言えば、高校の進学実績には様々な生徒が含まれています。もちろん松明塾に通う生徒も含まれていますし、他塾・他の予備校に通う生徒も含まれています。松高の先生の言うとおりに勉強して合格した生徒もいれば、先生の言うことを全く聞かずに独学で合格した人もいるでしょう。

そういう色々な生徒が混ざったものが高校の進学実績です。だから、合格者が全て松高の手柄ではないですし、不合格者の全てが松高の責任ではありません。そんなものをライバル視したところで、いったい誰と戦っているのかよくわかりません。

ここで松高実績を出したのは、あくまでも「一般的な松高生の実績数値」の指標として出していますので、そこを誤解なきようお願いします。

以上、合格実績の公表が終わったところで、ここからは私が合格実績を公表しない(したくない)理由を書きます。

1. 合格実績は生徒のものです

生徒が志望校に合格した。それは誰のお陰かといえば、そんなの生徒が頑張ったからに決まってます。

大学入試は単に「頑張って勉強したか、そうでないか」なんて単純なものではありません。学力以外にも、もっともっと本当に色々な要素が絡み合って合否は決まるのです。

もちろん塾だってサポートしますよ。でもね、実際に勉強するのは生徒です。実際に壁に苦しむのも生徒です。それを乗り越えるのも、乗り越えられないのも、全て最終決定権は生徒が握っているのです。

昨年国公立に合格したある生徒は、センター試験で大失敗しました。

直前期にスランプに陥り、本当に泥沼の学力・精神状態のままセンターに突入。

結果は見るも無惨な物で、センターリサーチはギリギリのD判定でした。

「二次に賭ける」といえば聞こえはいいですが、合格の可能性なんてほとんどないわけです。

何とかもがき苦しみながら二次試験に向かって勉強する彼に、更なる追い打ちがかかります。

受けた私大から、次々と届く不合格通知です。

いざ二次試験。やっぱり浮かない顔で帰ってくる。

そして、合格発表の朝。

彼は自分一人で発表を見る度胸がないので、朝から塾に来ました。

そして、震える手で受験票とスマホを持ってきます。

「草薙先生。。ちょっとこの画面見て欲しいんです。僕の番号……あるんです。夢かとおもって何度ほっぺたつねってみても、やっぱりあるんです。どうしても信じられないので、先生にも確認して欲しいんです」

私も受かるとは思っていなかったので、本当にびっくりしました。何度も何度も受験票とスマホの画面を見比べ、朝の静かな教室で、一緒に大歓声を上げました。

とても感動的なエピソードですが、ちょっと考えてみて欲しいんです。

この合格って、本当に「塾の成果」だと思います??

僕には到底そうは思えない。誰がどう考えたって、これは彼自身の栄誉であり、彼自身の手柄ですよ。

それを「塾の成果」として横取りして、誇らしい顔で「うちの塾に来れば国公立に受かるよ」なんて言えるわけないじゃないですか。

この受験は、彼が頑張ったから合格したのです。たとえうちの塾に通っていたとしても、彼のように頑張らなければ同じ大学には絶対に受からないのです。

だから僕は塾の成果として「合格実績」を公表し、うちの塾に来れば同じような成果が手に入ると思わせることが本当に嫌なのです。


2. 合格実績の中にはたくさんの涙が含まれています


上に書いたような感動合格エピソードもあれば、全く逆の不合格の涙エピソードもあります。

たとえば、かつて明治大学に進学したある生徒。

彼の本当の志望校は早稲田大学でした。

受験勉強を始めるのが遅かった彼に、僕は相当厳しい声をかけました。

その彼がようやく「本気」になったのが2学期に入ってから。

ありとあらゆる時間を自分の受験勉強につかい(お察しください)、本当に頑張って勉強して、「これはワンチャンあるかも」というところまで来ましたが、結果は早稲田のみ不合格。

最後に教室に来た彼は結構晴れ晴れとした表情をしていたので、

「まぁ早稲田は無理だったけど、思う存分やりきったわな。胸を張って明治にいきな」

と声をかけました。

彼はこう返しました。

「正直、めっちゃくやしいです。2学期以降の頑張りを最初からやれていれば、自分はきっと早稲田にだって受かってた。夏休みも本当に朝から晩まで塾で勉強していたのに、今思うと中身はスカスカだった。自分はいったい何をやっていたんだろう。そう思うと本当に悔しいです」

松高から一般で明治に行くのは、それはもう立派な成果です。

でも、彼にとっての明治大学というのは、頑張った証であると同時に悔しさの象徴でもあるんです。

こんな彼の姿を前にして、「明治大学合格!」って誇らしく宣言できますか!?

できるわけがない。彼の悔しさを反省して、後の生徒に同じ後悔をさせないよう自分の指導を変えていくことしか僕には考えられません。

こんな風に、見た目上はよい成果であっても、それが本当に「良い成果」かどうかはわかりません。

まして、合格した生徒の横には、見た目上のよい成果も出せずに涙を流している生徒もいるのです。

そういう様々な生徒がいる中で、良い成果だけを取り上げて、それを「塾の成果」として誇らしく宣言する。

もうね。茶番ですよ。

3. 合格実績をウリにすると教育は必ずゆがむ


これは大手塾や私立高校にいる人であればよくわかると思いますが、基本的に合格実績というのは下げてはいけないんです。

もちろん、落ちることだってあります。でも、一度合格実績をウリにしてしまうと、それがものすごい大きな恐怖になるんですね。私学や私塾の場合は、それこそ自分の生活に直接関わってくるわけですし。「上からのプレッシャー」も相当なものになります。

そういう恐怖に陥ると、もう子どもの育成とか、その子の希望とか、その子の状態とか、そういう色々な大事なものが目に入らなくなるんですね。

このままじゃ来年は実績が下がっちゃう→マズイ!→何とか合格させよう

という思考で、どんどん子どもに色んなことを強いるようになります。

勉強時間だったり、勉強内容だったり、勉強方法だったり、受験校だったり。

まぁ一言で言ってしまえば、子どもを一人の人間として見なくなるんですね。

実績を出すための人格のない駒みたいに見るようになるんです。

こんなとこにはちょっと書けないくらいのエピソードを僕は色々と見聞きしてきましたし、時に自身も戦ってきました。

そんな感じで、公教育・私学・私塾に関係なく、「合格実績」をウリにして勝負をするところは、多かれ少なかれ、必ずゆがむと僕は思っています。

更に言わせてもらえば、塾がゆがむのはまだいいんです。だって塾だったら生徒は辞められるからね。

自分たちが「実績」に狂った結果、生徒が減って苦しむのは自分たちです。

でも、学校はそうはいきません。

塾を辞めるような気軽さで、学校を辞めることなんてできないんです。

だから合格実績を意識してゆがんでしまった高校に通う生徒たちは本当に不幸です。

そして本当に怖いのは、こういう理屈は、実はゆがんでいる当事者たちも気づいているということです。

気づいているけど、どうにもできない。

だって怖いんだもの。

実績が下がって生徒が減るのが怖い。

実績が下がって上司に怒られるのが怖い。

実績が下がって評価が下がるのが怖い。

実績が下がって何が起こるのかよくわからないけど、でも何か怖い。

だから、こんなことやってちゃダメだと気づいてても、止められないんです。

気づかずにやっているのと、気づきながらやっているのは全然重さが違います。

気づかないのが原因であれば、気づいたら変わるかもしれない。

でも気づいているのに止められないのは…どうしたらいいんでしょうね。

いずれにせよ、私は自分の塾がゆがむのは勘弁願いたいので、合格実績をウリにはしません。

随分長い文章になりましたが、こんな理由から松明塾は実績を非公開にしています。

今回、非常に腹の立つ出来事があったので公開しましたが、原則として今後も非公開という方針を変えるつもりはありません。

色々なご意見があるとは思いますが、この非公開というのも、僕らにとっては大事な大事な「教育」の一環であることをご理解いただければ幸いです。
posted by たいまつ at 15:50| Comment(0) | 合格実績